村の畜産をもう一度
途絶えた養鶏業を
引き継いで

No.08

高橋直樹さん

株式会社大笹農場 農場長

福島県伊達市出身。防衛省職員を経て、2020年から父が立ち上げた養鶏場「大笹農場」のスタッフとして勤務。現在は葛尾村に住みながら、農場長を務める。

葛尾村は養鶏にぴったり。
高原の涼しい環境が気持ちいいんです。

もともと、うちは祖父の代から福島県伊達市で養鶏業を営んできました。「伊達鶏」っていうブランド鶏、聞いたことありますか?その生産地なんですよ。

実は葛尾村も、かつては養鶏業が盛んで、4軒ほど養鶏農家さんがいたそうです。でも、東日本大震災と原発事故の影響で、廃業を余儀なくされてしまって。そこで父が2017年に「株式会社大笹農場」を設立し、廃業になった養鶏場を引き継ぐかたちで、2020年から葛尾村でも養鶏業を始めました。

僕自身、子どもの頃は実家の養鶏を手伝ったりしていて、この仕事は身近な存在でした。社会人になってからは、防衛省の職員として働いていたんですけど、「大笹農場」の立ち上げをきっかけにスタッフとして加わることに。そのタイミングで、葛尾村へ移住しました。
子どもの頃に、何度か父に連れられて葛尾村に来たことがあったんです。なんとなく、その時の風景は覚えていますね。だから、移住したときも「初めて来た」という感じはなくて。

養鶏は、涼しい環境が適しているんですが、高原に位置する葛尾村はまさにぴったり。特に夏は、本当に気持ちがいいですね。

うちで育てているのは「ハーブ鶏」。
システム管理だけど人の感覚も欠かせない。

村内に2ヶ所の養鶏場があり、全6棟を稼働して飼育しています。その数、9万羽。飼料に食用ハーブをブレンドし、「ハーブ鶏」という名前で販売しています。葛尾村のふるさと納税の返礼品や、「葛尾村復興交流館あぜりあ」でも取り扱っていただいているので、見かけた際にはぜひ手に取ってみてください。村内の学校給食でも使ってもらっています。

今、農場長になって3年目。会社の代表は父ですが、農場の現場責任者は僕が担当しています。飼育はすべてコンピュータで管理しているので、力仕事はそこまで多くありません。その分、鶏たちのちょっとした体調の変化や、鶏舎の温度・湿度管理には、かなり気を配っています。

たとえば、システム上は問題ない温度でも、実際に鶏舎に入ってみると、空気のよどみを感じることがある。そんなときは、数字だけに頼らず、手動で調整します。そうした現場判断では、僕よりも長く養鶏業に携わってきた母の経験が頼りになります。鶏たちの様子や鶏舎の空気感を見ながら、心地よい環境をつくっていく。結構、経験や感覚がいきる仕事なんですよ。

昼ごはん

今日はうちで育てた若鶏のランチ。
うん間違いないおいしさ!

ひよこを鶏舎に運び入れてから、だいたい50日で若鶏として出荷します。新しいひよこが入った日は、毎回ちょっとしたお楽しみがあって。それが、うちの若鶏を使った母の手料理なんです。

今日はちょうどその日。
おっ、チキンライスとカレーうどん。炭水化物×炭水化物っていう組み合わせも、なぜか毎回決まってるんですよね(笑)。自分たちで育てた鶏だから、味も大きさも自信がある。うん、今日もおいしい。

昼休みは、スタッフみんなで世間ばなし。テレビをつけて、スポーツの話をしたり、政治の話題で盛り上がる日もあります。たわいもない話をしながら、ちょっとひと息。
さて、午後の仕事は鶏舎の見回りから行きますか。

僕自身村民だから。
村の今もこれからも
ちゃんと向き合っていきたい。

僕たちの農場は、循環型を意識しています。鶏糞を燃やしたときに出る熱を鶏舎の暖房に使ったり、鶏糞を農家さんに提供して肥料として活用してもらったり。こうした自然環境に配慮した取り組みは、これからも続けていきたいですね。

葛尾村に移住して事業を営んでいますが、僕自身が「村民」であることにも、意味があると思っています。村の今や、これからに対して、より真剣に向き合えるし、自分ごととして考えられる。ここは、都市部に比べれば、便利な暮らしとは言えないかもしれません。でも、ふとした瞬間に感じる気候の気持ちよさや、この村ならではの魅力があるなって。

村内にアパートを借りているんですが、実は事務所が住み込みで仕事できる設備になっていて、ほとんど家に帰っていません(笑)。帰るのは、郵便や荷物を取りに行くときくらい。
システム管理しているとはいえ、万が一のときにはすぐ対応できるように、できるだけ鶏たちの近くにいたくて。差し入れ?あったら、すごく嬉しいですね!(笑)

ある日の1日の過ごし方

6:30
起床
7:00
朝食
8:00
出勤/朝礼
8:30
事務仕事/鶏舎の管理
12:00
お昼ごはん
13:00
来客対応/鶏舎の管理
17:00
保健所対応
18:00
出荷作業
21:30
退勤
22:00
晩ごはん
23:00
お風呂
24:00
就寝

[2025年11月取材]

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